ハエ
ハエ
窓を開けて換気をしていたら小さなハエが入ってきた。
部屋の中や目の前をぶんぶん飛び回ってて目障りだったので叩き潰してゴミ箱に捨てた。
静かになってホッとしていたけれど、しばらくしてから思った。
「さっきまで生きてたアイツはもう死んでいなくなった。
命ってあっけないな。
いなくなればそれはそれで寂しい。
あのハエはもしかしたら私の遊び相手になってくれていたのかもしれない。」
…なんだかすこし切ない気持ちになってしまった。
ハエの死に顔は安らかだったから、まぁよしとしよう。
でも私がニーチェだったら発狂していたかもしれないな。
ニーチェは、イタリアの広場にてムチで叩かれている馬を見て可哀相に思い、その馬に抱きついて泣きわめいたらしい。
しかし私はニーチェではないから、ハエに抱きつかないし、泣かないし、発狂もしない。
次にハエが目の前を飛び回ったら、今度は箸でつかんでみようかな。
宮本武蔵は箸でハエをつかんだらしい。
本当かどうか怪しいが、本当だとしたらすごい。
だけど、ハエを舌で捕まえて食べるカメレオンはもっとすごい。